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根っこの成長

2010年5月
環境から生まれるつながり

今月の根っこの成長では入園して間もない年少組の子どもと年長組との関わりについてご紹介させていただきます。

本園では新年度を迎える準備は前年度年中組の子どもたちと教師が一緒に行っていきます。入園してから子どもたち同士が関わるのではなく入園前から子どもたちが繋がるように、一日入園で合奏やうた、皆で考えて手作りした紙芝居をしたり、3月にははがきを出して登園を待っていることをお知らせしています。


そして、新年度が始まり、幼稚園に新しいお友達がやってきます。お家から離れて初めて生活をする子どもたちは楽しみな気持ちと同時にたくさんの不安な気持ちも抱えて登園してきます。また何もかもが初めての経験となります。
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そこで、年長組の子どもたちは、新入園のともだちに自分達は何をしてあげられるだろうかということを考え、話し合いを行いました。
「シールの貼り方を教えてあげる」「かばんのしまい方を教えてあげる」「タオルをかけるところを教えてあげる!」というように朝の支度を教えてあげるという声が上がりました。まだ見ぬ、新しい年少組の子どもたちを思いつつ自分たちも年長組になったのだと実感しているようにも見えました。

1005-5.jpg話し合いが進んだところで「それじゃあ、みんなで年少さんのお手伝いできそうかな?」と声をかけたところ「できるー」「やる!」の声に混じって「できないかも・・」と声がしました。「何ができなさそう?」とその子どもに声をかけると「かばんのしまい方とか、年少さんに教えてあげるのは難しい。」という答えが返ってきました。そこで再び子どもたちと話し合いをしました。すると「もし年長が何をしたらいいか分からなくなったら年長が教えてあげたら?」という声が上がりました。「できないかも・・」と言った子どもと仲のいい子に「○○君が困っていたら△△君が教えてあげられる? 」と教師が声をかけると、うんと頷きました。仲の良い友達が助けてくれることで安心したのか「大丈夫そう?」と尋ねると、その子どもも頷きました。このような話し合いを通して、年少組の子どもを迎える心の準備をします。

そして、年少組の子どもたちが初めて登園する日を迎えました。何をしたらいいのか分からず立ち尽くす年少組の子どもと同じように緊張している年長組の子どもが出会います。おそるおそる近づき「お名前は?」「何組さん?」と声をかけ支度の手順を教えてあげます。少し大きなお兄さん、お姉さんたちは、少し小さな子どもたちに合わせて腰を降ろし接しています。中には声をかけても緊張してしまう子どももいます。「この子、何も言ってくれない」と困りながらも名札から名前とクラスを探り、お部屋へ連れて行ってくれました。逃げ回ってしまう子どももいます。追いかけて、追いかけて、やっと上履きを履いてくれたと思ったら、また逃げられてしまい、追いかけて・・と繰り返し、走り回って教えることも体験します。

この朝の支度を通して、教えてもらう側の年少組の子どもたちだけではなく、教えてあげる側の年長組の子どもたちも、逆にたくさんのことを学んでいきます。言うことを聞いてくれない中であの手この手を使って関わること。我慢をすること。また、事前の話し合いででたように「自分にはできないかも・・・」という気持ちを知り、自分たちも助け合うことが必要なんだということを知ること。この経験が土台となり自分たちだけではなく小さな友だちの気持ちに寄り添うこと、また仲間の気持ちに寄り添うことを学びます。

自分たちも小さな頃に年長さんに助けてもらった経験が土台となり、自然と子どもたちが年少さんはどうだろう?と考える環境がここにはあります。それは朝の支度だけではなく今後の行事運営の中でも出てきます。「年少さんを誘おう」「年少さんにも作ってあげるのはどう?」そんな言葉が子どもたちから度々発せられるようになってきます。それは年少さんへの気配りを越え、クラスの友達へ、家族へ、先生へ・・と次第に広がっていきます。みんなが手と手を取り合って大きな丸になるような感じとでも言えるでしょうか。

最後に私たち大人も子ども同士の関わりや繋がりによって子どもたちが成長すること、何気ない優しい言葉をかけられるようになること、大人が教えるだけでは子どもは育たないのだということを学ぶことができました。

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