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根っこの成長

2010年11月
環境から生まれるつながり〜運動会に向かう中で(年中組)〜

2010-11.jpg平和学園幼稚園では子どもたちが行事を作り上げていく中で、そこに至るまでの過程を大切に考えています。子どもたち一人ひとりにとって向き合わなければならないことがあります。今年の運動会を作り上げていく中でも子どもの成長を感じる場面がいくつもありました。今回の根っこの成長では、年長組の子どもたちのそんな姿の一部を紹介させていただきたいと思います。

平和学園幼稚園の運動会は、子どもたちが自分たちで行う競技を考えます。普段の遊びの延長線上にあるものから、いわゆる運動会的な競技まで様々なものが上がります。今年は140個の競技が子どもたちから出てきました。一部を紹介します。「たまいれ」「つなひき」「リレー」このあたりは分かりますね。続いて「サッカー」「ゴルフ」「おばけやしき」これらも、まだ想像ができますね。ここからが本番です。「流れ星が流れたら願い事をする競技」「肉食恐竜が出てくる競技」ここまでくると一体どんな競技になるのか想像が出来ないのではないでしょうか?

今回はこの「肉食恐竜が出てくる競技」を提案してくれた一人の女の子とその周りの友だちのことについてお話します。140個ある競技を3個まで絞っていく作業の中での出来事です。最終候補の20個くらいまで競技の数が絞られた中に「肉食恐竜」がまだ残っていました。その中から更に絞っていこうとしたときでした。「肉食恐竜」の競技が多数決により削られることが分かった時、その提案者の女の子は泣き出してしまいました。
「どうしてもやりたいの。」という声に同じクラスの子どもたちが励ましの声をかけます。「こんなに泣くまでやりたいなら、やらせてあげたらどう?」子どもたちが提案をします。それに対して一方のクラスはそこまで恐竜の競技に執着することなく、自分たちがやりたいものをやりたいと、その提案に納得する様子はありません。
「こんなに泣いているのにかわいそう。自分たちだったらどう思うの。」という意見が出ます。その時、話し合いの場にいた園長先生が2クラスの意見に違いがあることに気がつくよう子どもたちに言葉をかけました。「友だちのことを考えられることはいいけれど、逆にみんなのクラスじゃなく、こっちのクラスにそういう子がいて泣いているのだから、かわいそうじゃないか。やらせてあげようよ。って言われたらどうする?」と言葉をかけてくれました。「それは、いやだ」という言葉や「それでも、いいって言ってあげられる」などの言葉が子どもたちから返ってきました。

すると泣いていた女の子が自分の考えを言い始めました。「諦めるけれど、最後に決まったものの中に肉食恐竜が出てくるっていうことにして欲しい。」
「それなら、いいよ。」意外とあっさり子どもたちは受け入れてくれました。その結果、運動会では「恐竜のたまごおくり競争」というものを行うことにしました。

今回は子どもたちが泣いてしまった子どもの気持ちに触れて様々な行動を起こしました。気持ちを汲み取り叶えてあげようとすること。とは言っても、自分たちのやりたいことをやりたいという気持ちを伝えること。そんな、友だちの言葉や姿から何かを感じ妥協案を考え、みんなに伝えること。その提案に対して、おもしろさを感じたり、それぐらいならまあいいかと受け入れようとする気持ち。自分がいて、友だちがいて、もう1つのクラスの思いもある。たった1つの競技についての話が、たくさんの子どもの心を通過していきました。そこで様々な気持ちが芽生えたのだと思います。友だちを思う気持ち。自分たちの気持ちを貫く気持ち。自分はひとりではないという気持ち。少し諦める気持ち。受け入れてもらえたうれしい気持ち。競技決めの中で年長組の子どもたちが、ここまでたくさんのことを考えられるということに驚かされました。

今、運動会の準備に向けて子どもたちは2つ3つのことを同時に抱えながら頑張っています。自分たちで0から作り上げていくからこそ、ここまで頑張れるのだろうなという風に感じます。子どもたちが自分たちのすることに対して、責任感や使命感をもって臨んでいることがよく分かります。

そして、もう1つ紹介をさせていただきます。
年長組の子どもたちは運動会を迎えるにあたって一人ひとりが係の役を負います。例えば当日の実況を行う放送係。ラインを引くライン係。年少や年中の子どもの競技を手伝う年少係、年中係。などいくつかの係があります。

今回は「おみやげかけっこ係」を決める際に起きた子ども同士の関わりを紹介します。「おみやげかけっこ」とは未就園のこどもが参加する競技です。ある女の子は自分の弟が当日、この競技に参加することを知っていました。そしてこの係に立候補しました。しかし、多くの子どもが立候補したためにこの係になることができませんでした。座り込み声をあげて泣き始めてしまう女の子。友だちや教師の言葉も耳に入らず、ひたすら泣いていました。少し時間がたった頃、しゃがみこんだ女の子に「どうしたの?」と声をかける女の子がいました。なりたかった係になれなかったという言葉を聞いた、その女の子は「私もすずわり係になりたかったんだけど、負けちゃってなれなかったの。泣きそうだったけど我慢したんだ。年少係をやることにしたからいっしょにやらない?」と声をかけてくれました。それでも、その場から動けずシクシクと泣いている女の子。それから5分ほどたった時でした。泣いていた女の子が教師のところにやってきて「年少係、頑張ってみる。」と悔しそうな、でも少し前を向いていけるような表情で伝えにきました。

子どもたちが作り上げていく平和学園幼稚園の運動会です。当日の頑張りも、きっと素晴らしいものになると信じています。本番に臨むにあたっての準備の段階で子どもたちがたくさんのことを感じて支えあいながらやってきました。この経験がきっと、子どもたちを心強い存在にしてくれるのではないかと信じています。まだまだ多くの行事が控えている2学期です。どんな形で子どもたちが作り上げていってくれるのか、どんな経験をするのか年長組教師として見守り、ともに頑張っていきたいと思います。
 

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