たんぽぽ組の教室から、ふわりと小麦の優しい香りが漂ってきます。なにやら子どもたちがパンづくりをしているようです。
さかのぼること約1週間前。パン屋さんの紙芝居のお話がきっかけとなり、粘土でパンを作り、パン屋さんごっこがはじまりました。
はじめは2、3人で遊んでいたのが、いつのまにか仲間が増え、クラスの半分くらいの子どもたちが参加するように。
遊びが盛り上がっていくうちに、子どもたちの中からこんな声があがりました。
「ほんとうのパンをつくりたい!」
そんな子どもたちの思いから実現したパンづくり。
今回は一人一人、生地を自分の好きな形に成形しました。作っている時の子どもたちの表情は真剣そのもの。
さかなぱん、ぱんだぱん、でんしゃぱん、おだんごぱん、しかくぱん、、、形ができたら給食室のオーブンで焼いてもらいました。
焼き上がったパンをみた子どもたちは大喜び!「ほんとうのパンができちゃった。」
パンはみんなでおいしくいただきました。
子どもたちの小さな願いが一つ叶った瞬間でした。
『ちょっとずつ』
子どもたちが続々とパンを食べ終わり、遊びに出かけていく中、ぽつんと一人、席に座っている女の子がいました。手元には、まだ食べかけのパンが残っています。
「どうしたの?もしかしてパン、苦手だった?」声をかけてみると、
「ちがうよ。おいしいから、ちょっとずつたべてる。」
なるほど、わかるなぁ、その気持ち。
最後に食べようと思って、大切にとっておいた大好物のおかずに手を付けるときの、あの感覚。
おいしいからこそ、食べ終わりたくないあの感じ。
大きさは子どものこぶしくらいの小さなパンだったけれど、自分で作ったからこそ、おいしさも2倍だったのでしょう。一口一口大切そうに食べる彼女の姿になんだか心がほっこりしました。