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根っこの成長

2026年6月 1日

幼稚園だより「ロバのあくび6月号巻頭言」

保育室で打ち合わせをしていた時の出来事です。外で遊んでいる子どもたちの姿が自然と目に入ってきました。昼食を終えた子どもたちが、ぞろぞろと園庭へ出てきます。その中に、A先生と年少組の女の子Bちゃんの姿がありました。Bちゃんは、少しずつ園生活には慣れてきているものの、時折お母さんに会いたくなったり、保育者とふと離れたりしたときに涙を流すことがあります。A先生とBちゃんは手をつないで歩いていました。するとA先生が、他の保育者に呼ばれました。A先生は、手をつないでいたBちゃんに何か一言声をかけてから手を離し、「さくら組」の前で待つ保育者のもとへ向かいました。

 

その間、Bちゃんは園庭に置かれたベッドの縁に手を置きながら、A先生が戻ってくるのを待っていました。ほんの30秒ほどだったでしょうか。少し不安になったのか、先生の近い側の縁に移動してみたり、また元の場所へ戻ってみたり...。彼女なりに葛藤しながら待っている姿がありました。この1か月、担任の先生、学年の先生、もこもこの時間に関わる先生たちと関係を築いてきたBちゃん。きっと先生たちとの間に信頼が育まれつつあり、「戻ってきてくれる」と思いながら待つことができたのだと思います。話を終えたA先生がBちゃんのところへ戻ってきました。先生が何か声をかけると、ふたりは再び遊び始めました。

その時、ふたりは手をつないでいませんでした。でもBちゃんは、楽しそうに先生の後ろをついて歩きながら砂遊びを始めていました。ほんのわずかな場面でしたが、子どもの育ちにとって、大人の関わり方として大切なものがたくさん詰まっていたように思います。

A先生に、そのときの様子について聞いてみました。

Bちゃんから離れた時、何か声をかけていた?」

Bちゃんは急に離れてしまうと不安になってしまうと思ったので、「ちょっと行ってくるね」と声をかけました』

「お話が終わって戻ったとき、どうして手をつなぎにいかなかったの?」

『少し離れても遊べたらと思ってそうしました。でも、必要とした時にはすぐにつなげるようにと思っていました』

という返事が返ってきました。子どもの"そのとき"に寄り添う関わりであるなと感じました。

 

平和学園幼稚園では、自立(律)保育を大切にしています。よく自由保育と思われがちですが、"自由"を基盤とした自立(律)保育です。子どもたちの育ちに寄り添っていく中では、基本的生活習慣を中心とした「自立」はもちろんのこと、心の育ちに関わる「自律」が非常に大切になります。今回紹介した関わりの中には、自立(律)につながるヒントがたくさん隠されていたように思います。

子どもと大人との信頼関係は、日々の関わりの積み重ねの中で自然と育まれていきます。子どもは、「自分は自分のままで大丈夫」と感じながら歩み、大人は子どもを信頼して託していく。そうした相互の信頼が、子どもたちの心を育てていくのだと思います。

そして、"見ていてくれる"という安心感。直接スキンシップをしていなくても、自分のことを見守ってくれているという空気があるだけで、子どもたちは安心して生活することができます。それは、家庭であっても、集団生活の中であっても、変わらないことなのかもしれません。

 

子どものそばにいる時、大人はどうあるべきなのでしょう。どんな距離感が大切で、どんな言葉や行動が必要なのでしょうか。

その時々に答えのようなものはあるのでしょうが、唯一の正解はないのだと、日々の生活の中で実感させられます。

保育者として、そして一人の大人として、学ぶことの多いひと時でした。