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2018年1月10日 アレセイア通信

アレセイア通信2018年1月号

賀川先生の平和思想
~賀川豊彦先生と協同組合~
 
 新年おめでとうございます。2018年がスタートしました。どんな1年になるのでしょう。今年は韓国で冬季オリンピック、ロシアでサッカーのワールドカップが開催されるなど楽しい行事が続きます。また、2020年の東京オリンピックの準備も急ピッチで進みそうです。学校の三学期は期間が短く、その割に大切なプログラムや式(中学入試・高校入試・高2海外研修・卒業式)が多いので、私たち教職員はその準備に追われます。この間も、私たちは生徒たちが自分の夢を実現するための支援に心を込めてあたります。
 
 本学園の創立者である賀川豊彦先生は、世界平和の実現を目指して、様々な社会活動に取り組まれていたことは前号までに述べてきました。そして、賀川先生は多くの著作も残されています。また、各種の産業組合や生活協同組合の発足に貢献され、まさに「生みの親」の役割を担われました。第一次世界大戦、関東大震災によって農村をはじめ国内全般に深刻な不況が訪れる中、賀川先生は産業組合にしっかりと結集して暮らしを守ることが重要だと訴えられました。この産業組合の普及をテーマにした小説「乳と蜜の流るる郷」を世に送り出し、「救貧」から「防貧」への転換を図ろうとされました。そのために、賀川先生は様々な協同組合組織を設立されました。当時の社会状況は格差が拡大し、それを起因とする社会不安も生まれていました。先生は協同組合の事業と活動を通して、社会的な「セーフティーネット」を構築するとともに、学習活動を通して活動や事業を拡大されていきました。
 
 国連は2012年を「国際協同組合年」と定め、2016年には協同組合の「思想と実践」を無形文化遺産に登録して、これからも社会的課題の解決に必要な組織として協同組合の意味を重視しています。さらに、「持続可能な開発目標(SDG)」においても、「誰ひとり取り残されない」ために協同組合が果たす役割・分野は多大であると述べています。
 
 先生はこの協同組合運動を、生涯をかけて取り組んだ反戦・平和運動に連動するものと位置付けていました。その切っ掛けはアメリカ留学(1914年~1917年)にあったようです。アメリカから帰国した先生は、「救貧」「から「坊貧」の活動にその軸足を移し、労働運動、農民組合運動、消費組合運動を進められました。この間の経緯は著名な「死線を越えて」の中でも描かれています。
 
 ここ数年、国際情勢は過激なイスラム教徒によるテロ、北朝鮮の暴走、アメリカのトランプ大統領の出現によって先行きが不透明なだけでなく、世界平和を根底から脅かすような危うさを感じます。国内においても、株価の上昇や一部企業の業績回復が見られる中で、格差が広がり二極化が進み、負のスパイラルが断ち切れません。ある意味、賀川先生が協同組合運動を始められた頃と共通点があるのではないでしょうか。そして、まさに本学園が「小さな平和」から「大きな平和」へと言うコンセプトで進めているグローバル教育カリキュラムの方向性とも合致しているのではないでしょうか。賀川先生・村島先生の建学の精神を実現するための「鍵」がこの辺りにあるのではないでしょうか。
 
学校長 武部 公也
 

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