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根っこの成長

2026年7月17日

幼稚園だより「ロバのあくび9月号巻頭言」

遊んでいると、意図せず友だちと接触してしまうことがあります。けがをさせてしまうほどではなくても、ぶつかった拍子に転ばせてしまったり、振り向いた際に頭と頭がゴツンとぶつかってしまったり...。子どもたちの一日の中には、そのような出来事がよくあります。そんなとき、ぱっと「ごめんね」が出る子、「だいじょうぶ?」と声をかけられる子、まだまだことばが出ない子と実に様々です。一生懸命遊んでいれば遊んでいるほど、そのことばが出てくるまでに時間がかかります。また、「ぶつかったこと」が"押された"に変換されてしまったり、「手が当たったこと」が"たたかれた"に変換されてしまったり、「偶然」だったことが"わざと"に変換されてしまったりすることも少なくありません。そのため、私たちは日々、双方の子どもたちの声を聞くことを大切にしています。

 サッカーをしている子どもたちを見ていると、接触して転ぶ場面がよくあります。彼らも本気で遊んでいますから、相手が倒れてもプレーを続けることがあります。しかし最近は、誰かが倒れると「ごめん!」とすぐに声が上がり、「だいじょうぶ?」と仲間が声をかけます。すぐに立ち上がれないときには誰かが手を差し伸べて立たせてくれたり、みんなでプレーを止めてその子の周りに集まったりする姿も見られるようになりました。この変わりようは何だろう。このあいだまでは、接触すればすぐに「ファウル!」「イエローカード!」「PK!!」という具合に声を上げ、問題を解決することよりも、自分たちがいかに有利にプレーできるかというところが前面に出てしまっていました。しかし、それが少しずつ変わり"スポーツ"っぽくなってきている気がします。思い返せば、どの年長組もそうでした。最初はカオスで、次第にルールが生まれ、関係性が変わっていきます。自分ひとりで攻めようとしてうまくいかないことがわかると、パスをするという選択肢が生まれ始めます。それがうまくつながりゴールが決まると、点を決めた人も点をアシストした人も共に喜びます。1点が生む喜びが2倍にも3倍にもなる経験が少しずつ重なりました。そこに"おもしろみ"を感じたのでしょう。そんな経験を何度も重ねる中で、あそび方が変化していきました。

 また、遊びの中で結びつきが強くなった仲間同士は、普段の生活でも結びつきが深まります。それはよさでもありますが、時には衝突の種にもなります。日常生活の中で話し合う機会が増え、問題を解決する経験を積み重ねることで、自分の気持ちを知り、友だちのことを考える機会も少しずつ増えていきました。

 教育について学んでいると、「自己中心性」ということばに出会います。これは「自己チュー」と揶揄されるような「わがまま」という意味ではありません。「自分と相手は同じように見たり、考えたりしていると思いやすいこと」、言い換えれば、「『ぼくにはこう見える』と『友だちにはどう見えるかな』をまだ切り替えられない状態」です。2歳から7歳頃の子どもは、特に自己中心性が高いと言われています。

 幼稚園の子どもたちに「相手はどう思ったか考えてごらん?」と投げかけることは、「(相手にも思いがあることは)もうわかっているでしょう?」という意味を込めているのではありません。文字どおり、「相手はどう思っただろう」と考えるための問いです。その積み重ねが必要な時期なのです。

 私たちはつい、「友だちの気持ちはわかっているよね」という前提で話してしまうことがあります。しかし、本当に必要なのは、「君の気持ちや考えは何?」「うんうん、なるほど。」そして、「じゃあ、お友だちの気持ちや考えはどうだろうね。一緒に考えてみよう。聞いてみよう」と、時間をかけて対話を重ねていくことなのだと思います。

 そういう地道な話し合いの積み重ねを通して、子どもたちは自分の気持ちを知り、自分の思いを受け止めてもらう経験を重ねていきます。その中で、「自分は友だちや先生から大切に思われている」という安心感や自己肯定感が育まれ、それが足がかりとなって少しずつ友だちへの思いが芽生えていきます。「周りの人のことを考えられるようになる」という姿へとつながっていくのです。「自分を大切に思うことができて、初めて周りの人を思うことができる」。そうであるならば、私たちは一人ひとりの子どもを前にして、どんなことばをかけ、そこにどんな思いを乗せるのかを日々吟味していかなければなりません。子どもは、大人のことばやまなざしから感じ取り、学び、そして自ら行動していくのですから。

 一学期も、日々の保育・教育活動にご理解とご協力をいただき、ありがとうございました。本格的な夏の訪れとともに、いよいよ夏休みに入ります。9月にまた元気な子どもたちと会えることを楽しみにしています。どうぞ暑さに負けず、よい夏をお過ごしください。