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2018年3月 5日 アレセイア通信

アレセイア通信2018年3月号

「賀川先生の平和思想」
~一時的な平和運動とは?~
 
 3月1日に本校では第67回卒業証書授与式が挙行されます。218名の若人が学園を巣立っていきます。私は式辞の中で、賀川先生が神戸の貧しい地区で布教された頃、考えられた「子どもの権利」を取り上げます。本学園を創立された賀川先生の教育の原点は、この新川地区での子どもたちとの出会いでした。その様子は、小説「死線を越えて」に著されています。親が貧困に喘ぐ中、子どもたちは生命を保つのが精一杯の状況でした。現在の日本ではあまり見かけなくなりましたが、世界を歩くと残念ながら1日1人2ドルの収入が得られない地域は少なくありません。私もアジアやアフリカの開発途上の国々や地域を歩いてきましたが、特に、サハラ砂漠以南の地域の貧困は想像以上でした。まさに「死」と背中合わせの状態に何度も遭遇しました。家族全員をエイズで喪った14歳の少女からも、その悲しい体験を聞かせてもらいました。その時、日本の現状を思い起こし、平和とは何かを考えさせられました。
 
 残念ながら、現在の世界情勢は決して安心、安全で平和だとは言えません。世界各地で対立や紛争が絶えず、自分の国を捨てて難民となっている人が少なくない状況です。そして、核戦争の不安をぬぐい去ることができません。賀川先生は、「平和政策としての教育」という原稿の中で次のように平和運動を表現しています。
 
 
 日本は世界に先駆けて戦争を放棄し、陸海空軍を全廃した。この大きな空白を埋めて、善く平和日本の実を挙げ、無戦世界の実現を期するためには、日本国民の一大覚醒と逞しき実践が要望される。従って日本および日本人がとらねばならぬ平和政策は、一時的なお座なりなものでも、また因循姑息な消極的なものであってもならない。私は微温的な平和運動に反対し、戦闘的平和運動を提唱する。そして、これは現在の自分たちだけに止まらず、後代にまで継続して行かなければならぬと思う。太陽を射落として、戦争という焦熱地獄から世界を救い出す日までつづけられねばならないのだと思う。
 
 皆さんはこの熱いメッセージをどう受け止めますか。賀川先生はこの思いをバトンに込めて私たちに平和学園を遺してくれたのではないでしょうか。戦前、戦中に世界平和を訴えて投獄された先生は、自分の全てをかけて世界平和の実現を訴え続けられました。先生が生涯かけて、キリスト教の布教活動、協同組合づくりなどの社会活動、数々の幼稚園や本学園を創られた教育活動は全て「平和」に繋がるものでした。文中の「戦闘的平和運動」をどう解釈するかは様々だと思います。賀川先生のメッセージを学園として、そこで学ぶ一人の人間として、どのように受け止めるのか。そして、何をなせばよいのか真摯に受け止めたいと考えています。本日、学園を巣立っていく可能性を秘めた若人の成長を心から祈ります。ぜひ「まことの人」を目指してください。
 
学校長 武部 公也
 

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