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2018年4月26日

アレセイア通信2018年5月号

子どもの人権と賀川先生
 
 さる3月1日の第67回アレセイア湘南高校卒業証書授与式で217名の生徒が本校を巣立っていきました。非常に落ち着いた厳粛な雰囲気の中で、証書を授与することができました。私は式辞の中で、創立者である賀川豊彦先生が取り上げた子どもの権利について話をさせていただきました。会場の都合で卒業生とその保護者しか式に参列できなかったので、そこでお話しした内容の一部を少し補足して、今号で紹介させていただきます。
 
 世界には「児童の権利に関する条約(別名 子どもの権利条約)」というものがあります。1989年の第44回国連総会で採択され、翌年の1990年に発効し、日本では1994年に批准されています。実は、その70~80年前に、賀川先生は子どもたちが当然受けるべき権利について主張されていました。先生が子どもの権利に目を向けるきっかけになったのは、神戸のスラム街で出会った子どもたちです。1909年(明治42年)12月24日、21歳の賀川先生は神戸神学校の寄宿舎から、神戸の葺合新川というスラム街の長屋に移り住み、救貧活動を始めました。スラムは当時、「貧民窟」と呼ばれ、職にあぶれ、住まいをなくし、社会のどん底にいる人たちが集まって生活していました。新川では約2万7千坪に2000戸、7500人を超える貧しい人が住んでいたと推定されています。その悲惨な生活は、賀川先生が書かれベストセラーになった「死線を越えて」をお読みいただくか、再現ビデオ等の映像を見ていただければお分かりいただけると思います。新川地区で生活を始めた賀川先生は子どもたちの悲惨な状況に衝撃を受け、6つの権利を主張されました。それは(1)食べる権利(2)遊ぶ権利(3)睡眠の権利(4)叱られる権利(5)夫婦喧嘩を止めてもらう権利(6)禁酒をしてもらう権利でした。
 
 裏を返せば、その当時の子どもたちはその6つの権利が守られず、一個の人格として尊重されていなかったことが予想されるのではないでしょうか。
 
 では、現在の日本ではこのすべての権利が守られているのでしょうか。そんなの当り前じゃないかと思われる人もいらっしゃるかも知れません。私はこの中で4番目の「叱る権利」に注目しています。「叱る」という言葉は辞書によりますと、「(目下のものに対して)とがめ戒める。」とあります。おそらく誰でも叱られることは好まないでしょう。しかし、この叱られる権利を「教育や躾を受ける権利」と読み替えたらどうでしょう。生活に追われていた新川地区の親たちは子どもを叱る余裕もなかったのではないでしょうか。現代は「叱らない」時代だと言われています。しかし、学校や家庭で、親や教師がいかに本気で子どもたちと向き合うかどうかが大切なのです。なぜなら、子どもたちは本気で叱ってもらう権利を有しているからではないでしょうか。本校で生活する生徒と教職員が、熱く真摯に向き合ってお互いをリスペクト(尊敬)し合いながら磨き合うことを私は熱望します。それをきっと賀川先生も望んでおられるのではないでしょうか。
 
学校長 武部 公也